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フレット打ち考察

粛期間中は仕事がやや減りましたが、空いた時間は製作をしていました。

そんな中にやっていたのがフレット打ち。


以下の動画でその時の様子がわかります。








メーカーやルシアーの動画などでは事も無げにフレット打ちをしていますが、いざ自分でやるとそうは行きません。

フレット打ちもギターをいじり始めてから何度もやっていますが、まだまだ未熟で、やる度に課題が見つかります。

今回も、いろいろな課題と問題点が浮かび上がりました。


1.環境

これはフレット打ちをする作業机のことです。

現在の工房はガレージの奥にあるのですが、そこの床のコンクリートが年々沈下しています。建ててから40年以上経っているので仕方ないと思っているのですが、そのおかげで作業机ががたつきます。

脚に薄い板などをカマして何とかしていましたが、フレット打ちをするにあたっては打ち込む力が分散してしまい打ち込みが甘くなります。

加えてゴムの木でできているワークベンチも少し頼りなく、それなりに補強改造はしてるものの打ち込みが甘くなる一因になっています。

そこで机とギターの間にメイプルのスルーネック用の角材を敷くことにしました。

この角材をクランプで机に固定し、ギターをさらに固定します。

机の位置も、工房ないで一番水平が出ている場所に移動させることにしました。

今後は工房内も改装していき、できれば床にあらためてコンクリートを敷き直すことまでやりたいと思っています。それが無理なら床を張ろうかな。

2.フレット

フレットとは金属(ニッケル、銅、亜鉛などの合金)でてきた棒状のもので、これには“タング”と呼ばれる指板に掘られた細い溝に食い込む脚がついています。

この“タング”の幅がとても重要なことに気がつきました。

フレットはいくつかのメーカーが出していて、それぞれ全てサイズが微妙に違います。今回使用したフレットはStewMacで購入したMedium/Higher( #152)というものを使いました。

昨年自作したテレキャスにはMedium/Medium ( #148)を使ったのですが、この時は全く問題なくフレット打ちができました。

なのに今回は同じようなローズウッドの指板に、同じ溝切りソーで同じように溝を切り、深さもしっかりあるのに、打ち込みがうまくできませんでした。フレットプレスでもうまくできませんでした。

どう考えてもフレット自体に問題があるのではないかと思い、#152のタングの幅(厚さ)を測ると0.67mmくらいあります。

それに対して#148は0.49mmでした。

測り方の多少の誤差を考えても0.1mmの差があります。

今回掘ったフレットの溝は0.57mm。

油断してました。同じメーカーから買ったフレットだからタングの幅(厚さ)は同じだと思い込んでました。

0.1mm×22本=2.2mmもフレットのタングが指板に負荷をかけます。

しかも指板にはバインディングが貼ってあり、その抵抗もあるので指板が逆反りしにくいはずだし、ネックのロッドもすでに逆反り気味(指板接着面を逆反り平面出し済み)にしてあります。

どう考えても2.2mmの物理的なストレスをネックが逆反って受け止めてくれるとは思ない!

という考察に、レスポールの2度目のフレット打ちが終わったあとに辿り着きました。

もしこの考察が正しければ今回はフレットの溝をきっちり0.1mm広げる必要があったということになります。しかもバインディングを貼る前の段階で、指板を製作する最初期の段階で。

甘かった! 指板に溝を掘り始めた時は、フレット打ちに手こずってこんなことになるとは思いもしませんでした。

ちなみに同時に製作しているレスポールJrは、レスポールと全く同じ条件で同じフレットを打ちましたがすべて問題なく打ち込み終わりました。

この2本の差はローズ指板のセルバインディングのみ……

今回、指板を製作する時には打ち込むフレットに合わせた溝を0.1mm単位できっちり合わせて切らなくてはならないという事を学びました。

StewMacの溝切りブレード(Fret Slotting Table Saw Blade)で楽々溝切りができる!と思っていましたが甘かったです。

後日フレット溝を切るための、アサリ幅が微妙に違うノコギリいろいろ揃えました。



3.道具

フレットを打つためには金槌だけあれば良いと思っている人もいるかもしれませんが、それはかなり無謀だと思います。

プラハンマーでは弱いし、金槌ではフレットを傷つけますし、フレット打ち込み専用のブロックがないと望んだ仕上がりにならないと思います。

ただしそのブロックは市販しているわけではないので自作するか、StewMacやebayで手に入るフレットプレスの部品を流用する必要があります。






上記の動画の最後にブロックを自作した様子があります。

打ち込む指板のRに合わせてブロックを作らないといけません。しかも金槌の力をしっかりフレットに伝えることができる硬い木で。

結局メイプルネックの端材が大量にあるので、それを使いササっとブロックを作りました。

が、ここにも見落としがありました。ブロックの厚さです。元にした端材の厚さが22mmなので、それをそのまま使いましたが、ハイポジションのフレット間隔では厚さ22mmのブロックはとても使いにくかったのです。

かなり面倒ですが端材の厚さを18mmくらいまで落として製作するべきでした。

さらに最後に気が付いたのですが、フレットの端だけを狙って打てる、小さいブロックもはじめから作っておくべきでした。

この後もベースのフレット打ちをするので、このブロックが活躍する場面が多々出てくるのでイイのですが、レスポールのフレット打ち1回目から使っていればうまく行ったのに……と後悔しています。



4.フレット自体の打ち込み前の仕上げ

いよいよ最後の考察です。

セルバインディングのある指板ではフレットの“タング”をタングニッパーで一部切ります。

そのニッパーが曲者で、私のタングニッパーは切れ味があまり良くありません。

どうしてもタングが少しフレット裏に残るので、これを鉄工ヤスリで削る必要が出てきます。

これをしないとセルにタングの残りが当たり、凹み(スジ)がつきます。これが強烈にダサい!

ただこのヤスリで削る作業が超絶面倒なんです。なので適当にやると打ち込んだあとに後悔します。今回も1回目に手を抜いてしまったので2回目の打ち直しでセルの凹みの修正が大変でした。

すべての凹みが修正できたわけもなく、これが製品だったら間違いなくC級品でしょうね。

ほんのちょっとの「まあ、いいか」「面倒くさい」が最悪の結果をもたらします。


さらに「ケチ」もまた最悪の結果をもたらします。

長い状態のフレットを1本ずつ指板幅に合わせて切っていくのですが、少しでも無駄をなくそうと指板幅ギリギリでフレットを切っていきます。

すると、打ち込みの力加減でどうしても端がうまく入らないフレットをきっちり打ち込むのが困難になります。

打ち込んだフレットがそれなりに指板から飛び出していれば、先に書いた小さめの打ち込みブロックを使いきっちり曲げながら打つことができます。

根がケチなので、セコいフレットの切り方をして結局打ち直しになっているので、フレットの無駄でしかありません。つくづく自分が嫌になりますね。





以上が「今回のフレット打ちでなぜうまく行かなかったのか?」についての考察になります。

レスポールはまだ端の打ち込みが甘いフレットもありますが、とりあえず先に進めます。このレスポールはゴールドのレスポール(3月に完成)で学んだ技術の復習のために作っているので、失敗は失敗として甘んじで受け止め、さらに次に繋げるための生贄になってもらいます。あくまで試作です。このレスポールが完成した後も、完全・完璧なレスポールが作れるようになるまでレスポールを作り続けたいと思います。

そして納得のいくレスポールが作れたら、販売したいと思っています。


まだまだ修行はつづきます…

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